ほう。ここには暖炉があるんですね。壁に並んだ洋書も趣があっていい。
そこにある洋書や映画のパンフレットは、仕事でも使う資料なんです。
なるほど。面白いですね。山田社長はずっと不動産業の道を?
以前は遊休地物件の活用を手掛けていました。転機は茶屋町で手掛けたカラオケ店。当時のカラオケ店は、カラオケ機器メーカーが商品展示のために手掛けていたような状態でした。ですから、アパートのように並んだ画一的な部屋に、冷凍食品の食事、不衛生なトイレ、時間を過ごすことを楽しめる空間ではなかったんです。そしてそれが“当たり前”として受け入れられていました。
しかし、私はそこに疑問を感じたんです。そこで1億円の融資を受けて、茶屋町に自分の理想とするカラオケ店を出店したんです。
素晴らしい。“当たり前”というのはある意味諦念ですから、そこを追求すれば、より消費者のニーズに近いものが生まれるのですね。
仰る通りです。私はその“当たり前”を変えることにこそ突破口がある気がするんです。
そこからディベロッパーの道へ?
そうです。私はあえてこれまで北新地が目を向けなかった層をターゲットにリノベーションを手掛けたんです。新たならターゲットは、30代のビジネスマンや、20代後半のOLたち。彼らが健全に楽しめる場所をつくることで、新たな人の流れを生み出すことができました。それが「ESPASION YAMADA」です。
それも、ひとつの“当たり前”への挑戦ですね。
ええ。これまで街に来なかった人が待ちに来るようになれば、街全体が活気づくでしょう。一つのビルが人の流れを変える―その理想を胸に手掛けました。
“当たり前”を疑う見識こそが、次の時代を生み出すのですね。社長の今後のご活躍が楽しみです。
現在、私が目指しているのは茶屋町という街のブランド化です。阪急・梅田駅の近くに「XROSS chayamachi」という商業施設を運営開発しているのですが、そのモチーフは“道”。文化や感性、あらゆるものが行き交う場所にこそ、新しいものが生まれる。街を作り出すディベロッパーだからこそ、都市、そして都市に展開する他の企業とも手を携え、街そのものの町価値を高めていきたいですね。